~怖さもやさしさも持つ大恐竜人間博 その4~

 

ツアーはなんとか終了して、
冷や汗を拭いている僕の目の前に
藤代さんが通りかかりました。

「さっきは本当にすみませんでした」
僕は藤代さんに会ったら
いろいろと伝えたいことを用意していたのですが、
声をかけるとすぐに謝りました。

P君と一緒にメダルを見せびらかしていた
もう一人の子供の親の方も
続けて謝りに来ました。

すると、藤代さんは笑顔で
「いいんです」
と仰ってくれたんです。

そのあと、僕が嫁ハンを通して
藤代さんのファンになったこと、
写真が好きになったこと、
葉山のお店に行ったことなんかを話したのですが、
何よりも、藤代さんの「いいんです」が
心に残りました。

その言葉がまるで、詩をつけた
谷川俊太郎さんから発せられたような言葉にも聞こえて、
その瞬間、この大恐竜人間博の正体が見えたような気がしたんです。

いつもみたいに子供を叱りつける気力もなく、
肩を落としながら、
大恐竜人間に滅多打ちにされたように
会場をあとにしました。

会場のあった渋谷のパルコミュージアムから
アースデーが行われている代々木公園に歩く途中、
1月の14時らしい光が僕たちを真横からさしてきて
のびる影は大恐竜人間みたいだったなぁ。

(おしまい)

15/03/11