~ぶなの林のふくろう~

 

三年に一度の大地の芸術祭が
今年も無事に終了した。

と、その二週間前くらいに
残念な知らせを聞くことに。

10年ほど前にその土地を訪れて、
イベントを何度か行い、
その土地の人たちと交流をはかり、
その会話の中から僕の曾祖父とつながり、
僕の先祖をしることができた思い出深い場所。

新潟県の儀明という土地にある
2003年の大地の芸術祭で
中瀬康志さんという作家さんが
古民家を改装して劇場にした
儀明劇場「倉」。

たしか初めて見たのは2003年の大地の芸術祭のイベントで
倉で行われた人形浄瑠璃の公演。

写真のような山の奥地で見た浄瑠璃は
その景色とともに今でも記憶に残っています。

そこで一目惚れした僕は
自分たちで小さなイベントを開いて
儀明劇場「倉」をお借りさせていただくことに。

作家の中瀬さんともコンタクトをとり、
イベントを開くにあたってアドバイスをいただいたりもしました。

第一回目のイベントを終えた時に
当時、儀明劇場の管理人をつとめていた
小堺さんというおじいちゃん、おばあちゃんと出会います。

こうして2003年から3年ほど続けて、
儀明へ訪れるようになりました。

「倉」を合宿の場所にしたり。
夜になると人工衛星までみえるほど
透き通った夜空には満点の星が広がります。

すると、小堺さんのおばあちゃんが訪れてきてくれて
一緒に歌をうたうことに。

実は小堺さんの通っていた小学校の校歌を
僕の曾祖父が歌詞を作っていたというお話をお伺いしました。

僕はそんな話を親からも聞いたことがなかったのでびっくり。

「ぶなの林の風ひかる 学びや楽し愛の園」
から始まる歌詞を
カラオケ教室に通うほどの歌が大好きなおばあちゃんが
自慢の歌声で聞かせてくれました。

変拍子のリズム。
作曲は山田耕作。

僕らがアレンジして
一緒に奏でます。

あのときの音は今でも覚えています。

そして翌年、
部屋中にふくろうのオブジェがある
小堺さんの家に
曾祖父の歌詞と儀明劇場にやってきたふくろうを描いた
一枚の絵を送りました。

おばあちゃんは泣いて喜んでくれました。
そしてずーっと大切に飾ってくれていると書かれた
年賀状が届いたり、
暫くは年賀状だけでしか連絡をとっていませんでした。

そしてその思い出の場所
いろんなきっかけを作ってくれた
儀明劇場「倉」が今年で閉館すると聞いて
すごくショックを受けました。

と、同時におじいちゃん、おばあちゃんは元気かな?
という心配もしました。

今年は悔しい別れが続いたので、
ちゃんと挨拶をしにいきたい。

そう願って、連絡もとらずに
Pちゃんを連れて、友人と三人で
小堺さんのお家にお邪魔することに。

残念ながらおばあちゃんは
畑仕事で不在でしたが、
おじいちゃんが笑顔で迎えてくれました。

「今度はまたみんなで遊びにきなさい」

そう言ってくれたおじいちゃん。

儀明劇場「倉」にも別れを告げ、
儀明をあとにしました。

ステキな出会いをありがとうございました。
この出会いを大切にしていきたいと思います。

(さようなら)

12/09/19