~blackbird fly その3~

 

窓からは気持ちの良い日差しが部屋に差し込みます。
その窓もあけて、さわやかな朝の空気が
昨日までの不安に満ちた部屋の中を
喚起してくれました。

小鳥ちゃんの鳴き声はいっそう大きくなりました。

放す前に餌をあげてからにしよう。

そういって僕が
今にも飛び立とうとしている小鳥ちゃんを
虫かごからそっと取り出して
くちばしを押さえて
P君が注射器で餌を与えます。

  食べた!

驚きよりもうれしそうな子供たちの顔が
印象的だった。

「ほら、あそこお父さん!」

小鳥ちゃんのお父さんとお母さんが
すぐそこまで迎えにきてくれていました。
不思議と僕たちに警戒している様子はありませんでした。

餌をひと口ぺろりと食べた小鳥ちゃんでしたが、
食べることよりも羽を広げようとしていた様子だったので
庭に出てそっと放しました。

すると、お父さん鳥がすぐによってきて
一緒に飛び立とうとするのですが、
小鳥ちゃんが飛びたてません。

  あれ、飛べないのかな?

一瞬不安がよぎったのですが、
お父さん鳥はすぐに戻ってきて
口にくわえた餌を小鳥ちゃんにあげていました。

「すごい!餌あげてるよ!」

子供たちも大興奮。
朝から大声で小鳥ちゃんたちを応援します。

餌を食べて元気になったのか、
お父さんとお母さんに連れられて
しばらく歩いてから、
羽を大きく広げて飛び立っていきました。

「バイバーイ!」

朝6時に響き渡る台詞ではありません。

ボクは大変恐縮ながら
部屋に戻ってからギターを手にして
小さめの音で
blackbirdを口ずさむのでした。

Blackbird singing
in the dead of night
Take these broken wings
and learn to fly
All your life
You were only waiting
for this moment to arise.

小鳥ちゃん、ステキな思い出をありがとう。
お元気で。

14/06/09