僕の部屋にはテレビがない。その代わり小さな窓が二つある。一つは隣の家の中学生のお兄さんの部屋が見えて、もう一つの窓からは赤い空が見える。西の方角は一面田んぼになっていて、夕日が沈むころ部屋の中は夕焼け色に染まる。そんな部屋の中で僕は、よく窓から西の空を眺めていた。
夕飯になると父がニュース番組をつける。野球のニュースになると僕たちは会話のボリュームを下げないといけない。けれど、最近ボケ気味のおばあちゃんは、散歩で仕入れた話を今日もお構いなしにしてくれる。今日の話は、先日も聞いたことのある、となりの中学生のお兄さんの話だった。
「ちょっとシッ!」父とおばあちゃんのいつものやりとりが始まる。
おばあちゃんが母のお母さんだったら、きっとこうはならなかったのかも、そんなことを思いながら隣にいる一つ上の兄の顔を伺う。食卓では、僕と兄の向かい側に父が座っている。台所に近い席に母が座りその向かい側におばあちゃんがいる。僕たちの背面にテレビが置いてあるので、こういうとき目のやり場に困るので、僕は何か困ると兄の顔を見るようになっていた。僕が兄の顔に視線を送ると、母が僕のお皿におかずをよそってくれる。ニュースが終わるころに夕飯を食べ終えた僕は、お皿を台所の流しに運んだ足で自分の部屋に戻り、隣の家のお兄さんの部屋の灯りをチェックしていた。
(おしまい)
今日も来てくれてありがとうございます。子供たちが学校で作文を褒められたそうなので、刺激をうけた僕も短いお話を作ってみました。お正月限定で続けてみようかな。
18/12/30